現地で感じた米中貿易戦争

 この8月に1年ぶりに中国を訪れた。行くたびにその発展の速さに驚かされる中国だが、今年はいつもとは少し事情が違う。このところ急速にエスカレートした米中貿易戦争は、中国にどのような影響を及ぼしているのだろうか。

 福建省から上海に移動したが、いずれも街は大いに賑わっており貿易戦争の影は全く感じられない。ただ、話を聞いてみると、貿易額急減の煽りを受け、輸送関連の会社などではすでに倒産するところも出てきているらしい。

 米中貿易戦争について今回特に印象的だったのは、「中国政府は絶対に妥協しないだろう」と誰もが口を揃えていたことだ。同時に彼らはアメリカも絶対に折れないだろうと見ている。

 アメリカは、自分たちが取った措置は中国の不公正な貿易と違法な情報収拾に対する制裁であると主張している。だが、実際は経済的に強くなった中国がアメリカの覇権を脅かすと一方的に危機感を募らせているのであって、アメリカの主張は言いがかりに過ぎないと中国人は思っている。

 かつて日本が貿易戦争でアメリカに叩かれた時、多くの日本人は良いものを安く売って何が悪いと感じた。今の中国人が抱いている感情もそれに似ている。自分たちは努力を積み重ねてきた。その結果、中国の力がアメリカを凌ぐほどになったからと言って、何故、理不尽なバッシングにあわなければならないのか。

 もっとも、今の中国はかつての日本に比べてはるかに強大だ。アメリカが脅威を感じるのも無理はない。だから、アメリカも決して妥協しないだろうと彼らは思っているのだ。

 では、この経済戦争は、今後、どのように展開していくのだろうか。米中いずれかが勝利し、どちらかが衰退するのだろうか。あるいは互いに別々の道を歩み世界は二分されていくのだろうか。それについては誰もが口をつぐんだ。だが、中国が負けるとは誰も思っていない。  

 中国滞在中、香港のデモもテレビを賑わしていた。当然、放送は中国寄りで、デモ隊の暴力で負傷した警官をクローズアップし、暴力は許せないと訴えていた。また、デモのアメリカ陰謀説もまことしやかに報じられていた。

 だが、香港のデモに対しては理解を示す人も少なくない。中国への返還後、50年間は高度な自治を認めたはずなのに、なぜ中国政府は約束を違えて自治権を脅かす政策を次々と押し付けるのか。そこには中国国内に対しても強権的な態度を強めつつあるこのところの習近平政権に対する反感が見え隠れしていた。

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