中国で見る格差の実際

「中国人が豊かになった」と言うと、日本ではまだ、それは一部の富裕層だけの話だろうと考える人が多い。だが、今や世界中に中国人旅行者が溢れている。豊かさの波は確実に裾野に広がりつつあるのだ。

この8月の中国出張では、福建省の廈門(アモイ)と泉州、浙江省の温州と杭州を経て上海に至った。高速鉄道で移動していくと、途中、次々と姿を表す夥しい数の高層マンション群に驚かされる。この数年、地方の様子はすっかり様変わりしているのだ。

マンションの価格はその町の経済レベルのバロメーターだ。中国有数の靴の生産地である泉州のマンション価格は1㎡あたり6000元程度。中国のマンションの面積は共用スペース込みで表され、泉州のような地方では200㎡が普通だ。つまり120万元(約2000万円)ということになるが、中国では内装は別途なのでトータルでは3000万円程度になるはずだ。日本と比べても安くはない。

この泉州の人々の暮らしは中国全体から見て一体どの程度のレベルなのだろうか。工場の担当者に聞いて見ると、平均より少し上くらいではないかという答えが返ってきた。

次に向かった温州は商才に長けた金持ちが多いと言われる町だ。そのマンション価格は1㎡2万5000元から3万5000元。内装費込みで1億円~1億3000万円程度だ。もっとも、温州の金持ちはほとんどが上海などの大都市に住んでいるという。

その上海のマンション価格は1㎡10万元を越え、150㎡でも3億円程度になる。ざっと泉州の10倍だ。確かに上海での暮らしぶりは垢抜けており泉州とは比較にならない。だが、マンション価格からわかるように泉州が貧しいわけではなく、上海の方が異常なのだ。

中国ではこうした都市と地方の差だけでなく、都市は都市、田舎は田舎に住む人の間で大きなレベルの差がある。上海で高価なマンションに住めるのはあくまでも上海市民に限られ、地方の農村からの出稼ぎ労働者にはとても無理だ。だが、そうした人たちが苦しい生活をしているかと思えば、彼らも高度に発達した中国のスマホライフを謳歌しているのだ。

15年ほど前、上海の街中では10円も出せば美味しい中華まんじゅうが食べられたが、今でもほとんど値上がりしていない。一方、かつては1人2000円も出せば豪華な食事ができたが、今ではちょっと洒落た店に入ればすぐに1万円くらいは取られてしまう。

つまり高価なものはどんどんグレードアップして欧米を追い越すほどになったが、今でも安いものが残っているのだ。収入に大きな差がある一方、物価にも大きな幅があるため、ブランド品や外国製品にこだわらなければ相当安価な生活が可能なのである。

こうした傾向は地方都市でも同じだ。泉州でも金持ちは高級車を乗り回していが、収入が低い人々の暮らしもそれほど悪くない。平等と言われる日本では、何かのきっかけで誰もが厳しい貧困に転落しかねない過酷な格差社会になりつつある。一方、中国では様々なレベルの人が共存できる社会構造があり、さらにその底辺は急速に底上げされつつあるのだ。

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