中国に学ぶべきこと

 年明け早々、日本の景気の悪さを尻目に、中国からはやたらと景気のいい話ばかりが聞こえてくる。昨年の自動車販売台数はアメリカを大幅に上回り、今年はGDPで日本を追い抜きそうだ。上海では街は大賑わいで、レストランの予約を取るのも困難な様子だ。

こうした中国に対して日本の書店で目立つのが中国脅威論とバブル崩壊論だ。確かにいずれも根拠のない話ではないが、その多くが落ち目の日本のひがみと焦りから来た偏った見方で、今の中国の実像は見えてこない。

中国の最大の特長は、この先どういう国を造っていくかという確固としたビジョンがあることである。現在の中国の繁栄は、そのグランドビジョンに基づいて着実に計画を実行してきた結果なのである。しかも、その実績は国民から支持されている。一昨年の北京オリンピックの成功や今回の世界的な経済危機を真っ先に乗り切ったことにより、国民はさらに自信を深めただろう。現在の好況は、国家の将来に対する自信と期待の表れなのである。

 昨年の天安門事件20周年において目だった混乱が起きなかったことも、そうした中国国民の意識を反映している。確かに中国政府のコメントにはかつての事件に対する反省は一切見られなかったが、だからと言って天安門事件を肯定しているわけではない。時代が変わっているのである。この20年間の改革開放路線で中国は飛躍的に豊かになり、同時に国の考え方も大きく変わったのだ。むしろ、アメリカと一緒にイラクに戦争を仕掛けた国々から「民主化」についてとやかく言われる筋合いなどないというのが、多くの国民の思いだろう。

中国はどのような国家を目指しているのだろうか。昨年暮れにコペンハーゲンで開かれたCOP25における中国の身勝手な主張に頭に来た人も多いだろう。しかし、彼らの言動は始めから批判覚悟の外交戦略だ。もちろんそこには、不況脱出のためには中国経済に頼らざるを得ない先進各国の足元を見透かしたしたたかな計算がある。だが、中国が環境を軽視しているわけではない。環境問題の解決なくして彼らの理想国家建設の計画は完結しないだろう。しかし、国内にさまざまな問題を抱える中国にとって、当面、成長を最優先せざるを得ない事情がある。だが、その成長の先には、世界一の環境先進国になる青写真もしっかりと描かれているに違いない。中国とはそういう国なのだ。

何も経済を優先しろとか中国をまねろと言っているのではない。中国にも弱みはあるし、誤算もあるだろう。しかし、国を挙げて理想を着実に実現していく姿勢からは学ぶべき点が多くある。未来に対して道が示されていれば、相当の困難でも耐えられるものだ。日本に一番欠けているのは、将来に向けた明確なビジョンなのだ。偏見にとらわれている場合ではない。この隣国に学びすぐれた点を吸収することにより、われわれが歩むべき道を見出すときが来ているのである。

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