不都合な真実

大きな危機が間近に迫っていても、人はそれに備えるよりむしろそこから目を背ける傾向がある。

バブルの頃、それが間もなくはじけると警告していた人はいた。株価や地価が永遠に上がり続けるわけがない。だが、多くのマスコミや専門家はさまざまな理由をつけて世間を煽り続け、国の対策も後手に回った。そして人々もまたそうした心地よい説に酔ったのだ。

思えば第2時世界大戦に突入して行った日本にも同じことが言えるのではないか。アメリカと戦争すれば負けるに決まっていたはずだが、日本人は負けた時の悲惨さよりも軍部の威勢のいい不敗神話を信じたのだ。

厄介なのは、そうした危機が現実のものとなっても、その後、誰も責任を取らず何度でも同じことを繰り返すことだ。あれほど甚大な被害をもたらした福島原発の事故を経ても、かつて安全神話を作り上げた政府の考え方は本質的に変わったようには見えない。

そして今、また新たな悲劇の予兆が感じられる。

日本政府と地方の債務残高の合計は2017年度末時点で1000兆円以上に膨れがっている。これは先進国中最悪の状況だが、政府には特に危機感は感じられない。

2006年、政府は将来の財政破綻を回避するために、2011年に基礎的財政収支を黒字化する目標を立てていた。だが、これはリーマンショックを理由に2020年まで先送りされた。それがこの度、さらに5年間、あっさり先送りされたのだ。しかも、この新たな目標も達成はほぼ不可能だと考えられている。

政府は本気で借金を減らす気はないのだろうか。とはいえ、今後、少子高齢化が進み社会保障費は確実に増加し、放っておけば借金が膨らみ続けるのは間違いない。政府は無限に借金を増やしていけると考えているのだろうか。

まさか日銀がお金を刷って国債をどんどん買い上げれば政府はいくらでも借金できると考えているわけではあるまい。そんなことをすれば通貨の信用が保てなくなるからだ。その信用を示す指標の一つが長期金利の動向だ。長期金利は国債の利回りに直結し、政府が支払う利息を決める。利払いが増えると政府の財政は途端に苦しくなるので、現在日銀は金融政策を駆使して必死に長期金利をゼロに押さえ込もうとしている。

だが、そのために日銀が取っている金融政策にはかなり無理があり、次第にさまざまなところで弊害が現れてきている。もし何らかの要因で金利の制御が効かなくなれば、政府は財政破綻を回避するために、それこそ異次元の増税をするしかなくなってしまう。

最大の問題は、政府がそうしたリスクを国民にちゃんと説明しないことだ。借金を減らそうとすれば、社会保障費を減らすか増税するしかない。必ず痛みを伴うのだ。しかし政府は、そうした不都合な真実にはけっして触れようとはしない。

結局、国民は甘い言葉に騙され、歴史はまた繰り返されることになるのだろうか。

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