再始動

 今年の5月に名古屋の平田温泉という銭湯で1ヶ月間写真展を開いた。

 前回の写真展から3年が経っており、今回は新作を展示するつもりだったが、なかなか撮ることができず、結局、昔の写真を使うことになった。かつて苦労して撮った写真が日の目を見るのは嬉しいが、新作を発表できないのはなんとももどかしかった。

 最近、写真を撮っていないのにはいくつか理由があった。僕の写真の撮り方は、主に街で出会った人に頼んで撮らせてもらうか、街行く人をそのままをスナップするかのいずれかだ。だが、どちらの場合も昨今うるさい個人情報が気に掛かる。

 技術的な問題もあった。かつてはマニュアルカメラに単焦点(35mm)レンズ、モノクロフィルムというのが僕のスタイルだったが、時代はデジタルに変わった。デジカメは便利だが、その安直さになんとも言えない違和感があった。

 だが、そんなことも言っていられない。なんとか写真展に新作を加えようと、一念奮起して機材を買い揃え、デジカメ片手に再び街に繰り出したのだ。

 レンズは1635mmの超広角ズームを選んだ。超広角では被写体が小さくなるので、ぐっと近寄る必要がある。撮影後、近づいてくる相手にぶつかるくらいでないと迫力ある写真は撮れない。

 当初は慣れないデジカメに手こずったが、次第にかつての撮影時の感触が戻ってきた。デジカメならではの高度な機能も慣れるにつれそのありがたみを実感するようになった。

 個人情報に関しては、もちろんうるさい輩はいるが、最近は所構わずスマホで写真を撮るのが当たり前になっているためか、むしろ以前よりも撮られることに慣れているように感じられた。

 こうしてなんとか写真展に新作を3点追加することができた。同時に自らの写真ライフを再びスタートさせることができたのである。

 さらに、これを機にインスタグラムへの投稿を始めた。当初は仲間内でインスタ映えを競う自己満足の場かと思っていたのだが、始めてみてみて驚いた。そこはプロ、アマを問わず世界の写真家がクオリティーを競い合う夢のギャラリーだったのである。

 投稿写真は膨大な数だが、気に入った写真家をフォローすることにより、その写真家がアップすると同時に自分に送られてくるようになる。つまり次第に自分の好きな写真が自分のところに集まる仕組みになっているのだ。逆に自分の写真も自分をフォローしてくれる人(フォロワー)が常にチェックしており、下手な写真はアップできない。

 従来、プロの写真はレベルが高く、アマチュア写真とは一線を画していると信じられてきた。しかし、インスタグラムにはプロには撮れそうもない質が高く個性溢れた膨大な写真が、日々、投稿されており、プロの写真の権威は急速に陳腐化しそうだ。今まさに写真の可能性が大きく拡がろうとしているのだ。    (Instagram ID:ebiman_stasta)

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